年金・保険のはなし


先日、年金通知のハガキが来た。
このハガキは、ぼくが60歳を過ぎたころから来ているので今回で4回目だと思う。毎回同じ数字が印刷してある。「12782円」という数字だ。月額ではない。これは年額の数字なのだ。

埼玉に住んでいたころ、同じ職場で働いていた20歳近く歳が離れた前川さんという友人がいた。ぼくは40歳で天草へ引っ越したから、そのころ前川さんは60歳に近かった。
「じき、60になる。年金がもらえるようになったら天草へ遊びに行くから」
それが前川さんから聞いた最後の言葉だった。
そう、前川さんは年金をもらう前に亡くなった。
バラ色の老後とはいわないが、前川さんが温めていた「老後」を思う。

また埼玉のころ、未来工房と名前をつけた看板屋がいた。
北海道の出身だった。冬になると薪ストーブで北海道から届いたニシンやタラの干物を焼いていた。女の子が一人いて、名前を未来(ミク)ちゃんといった。
彼は喘息の持病を持っていた。歳はぼくよりも4〜5歳上だっただろう。
その彼が、持病の喘息のせいでどうしても生命保険に入れなかった。彼が、保険の担当者に嘆願する姿が焼き付いている。

以来、ぼくは年金や保険といったものから距離を置いている。
この先どうなるかわからない。でも、こうした仕組みの中にいることがたまらないのだ。

寒い雪が解けて、久々の陽射しの中で思い出してしまった。