氷石

 氷石(こおりいし)と読む。英語では、フリーザーストーンという。では、これは何か。適当に拾ってきた石を冷凍庫で凍らせる。それだけだ。しかし、これが都会で流行っている。もちろん、今年の夏の節電対策でもある。
適当に拾ってきた石、といったが、実は石ならなんでもいいというわけではない。少しざらついたような砂岩がいい。そしてできれば渚にあって波にもまれて角が取れ、丸みを帯びて平べったいとなおいい。使い方は簡単だ。冷凍庫で冷やした石をタオルやスカーフでくるんでうなじにあてる。氷石が流行り出してから、ポケット付きのスカーフまで売り出された。最近ではポケット付きバンダナも登場した。
ところでおれのまねをするやつが現れた。やはり石なのだが、同じ石でも河原の砂利だ。もちろんこれでもかまわない。しかし、小学生のころにアイスキャンデーをつくる実験をしたことがないか。そうだ、氷に塩を入れる。塩を入れた途端に氷はギンギンに冷える。河原の石と海水につかった石の違いはここだ。釣り師たちは、クーラーボックスに砕いた氷とともに海水を入れる。同じ理屈だ。ザラメの砂岩は、たっぷり塩を含んでいる。これ以上の説明は必要ないだろう。

おれは毎日海へ行っては石を拾い、10キロ入りの段ボールを4箱から5箱送る。一つの石が50グラムから100グラムだから、段ボール一箱に150個ばかりの石が入る。この石が一つ50円で売れる。送料を引いても一箱が6000円ほどになる。夏場限定とはいえ、いい商売だ。