蛾の重さ
夕べ、どこからともなく蛾が舞い降りてきた。
蛾は、羽を震わせている。なにかを必死で訴えているようでもある。
なんだろう?なにを伝えようとしているのだろう?
そういえば、以前書いた虫の詩があったな、と思った。
詩集『見えないところで』より
遊ぼうと思っただけ
遊ぼうと思っただけなのに
あなたはわたしを叩いた
顔の周りを飛ぶのは 親愛の挨拶
わたしは この世界について
わたしの知っていることを 伝えたかっただけ
わたしはあなたを選んだ
でも あなたはわたしを選ばなかった
あなたの一撃でわたしは窓まで飛ばされ
羽の片方が折れてしまった
遊ぼうと思っただけなのに
今日の暑さと明日の朝露の話を
あなたとしてみたかっただけ
ただ 夜になって
灯りのもとに歩み出たわたしを
あなたはそっと手のひらにのせた
それで わたしは伝えることができた
わたしはあなたと遊ぼうと思っただけ